イスタンブル – 乗り継ぎの合間で街歩き

旅行

イスタンブルは、古くから文明の交わる街として知られてた。古くはビザンチオン、コンスタンティノープルなどと呼ばれ、イスタンブルに変わった今でもギリシャ語ではコンスタンディヌーポリという。

ぼくはこの街へ目的を持って行ったわけではなかった。
仕事でドイツへ向かう便がイスタンブルで乗り継ぎだった。ただそれだけだった。

 

トルコの玄関口アタテュルク国際空港

ぼくの乗ったターキッシュエアラインズのエアバスA330型機は、関西国際空港を21時40分に出発し、早朝5時にイスタンブル・アタテュルク国際空港についた。
沖止めされた飛行機から、ぼくたちはリムジンバスと呼ばれる座席のないバスに乗って空港ビルに入った。
ドイツへ向かう乗り継ぎ便は13時30分離陸予定。8時間もの待機時間であった。

ぼくはリムジンバスの中の短い時間で考えていた。この待機時間をどうやって過ごそうか。


早朝のアタテュルク国際空港は比較的空いている印象だった。
この時間の到着便は我々の乗ってきた日本発便が成田空港からと関西空港からの2便。
その他数便が行き来しているだけのようだった。
これらの乗客を合計すると2000人規模になると思われるが、巨大空港にとってはいないも同然だった。
この時間は免税店も開いておらず手持ち無沙汰になることは確実だった。
安いエコノミークラスの航空券を買っていたぼくはラウンジに入ることも許されず、どうしようかと思案した。

ぼくの出した結論は「イスタンブルの街に出よう」だった。

空港ビルに入ると、入国者と乗り継ぎ者に振り分けられる。ぼくは入国者(多くはトルコ人のようだ)と一緒に入国審査の列に並んだ。

日本を発つ直前、書店でたまたまトルコ旅行のガイドブックを見つけて購入していた。
ぼくは地図を見るのが好きだ。
斜め読みしたそのガイドブックから、綴込みの地図だけを外して持ってきていたのだ。
今思えば用意がいいような、意図的なような気もするが、その時は他意はなかったことだけは申し上げておこう。

トルコリラを手に入れる – 外貨両替

今回の旅行について、外貨の用意は全くしていなかったので、まずは両替をすることにした。

入国審査を済ませたぼくは入国ロビーの左脇にあった両替所で、半日分の費用として5000円を両替することにした。
窓口は二つあって、若干レートの良い方に列ができていた。
ただ、少額のぼくにとっては、そのレートの差はないものと同じだったので誰も並んでいない窓口で両替を済ませた。

トルコリラを手に入れたぼくは心躍った。

さあ、街に向かおう!

イスタンブル旧市街までの移動手段

タクシー?それともバス?

タクシーはあまり好きではないぼくは、それ以外の方法で行ってみたい。
日本で目を通したガイドブックには
・新市街の中心「タクシム広場」へ直通のバス
・メトロとトラムを乗り継いで行く
の二つの方法が書いてあった。

少し考えたぼくはメトロとトラムを乗り継いていくことにした。直通バスは便利だろうけど、人々の乗り降りがない。
鉄道を乗り継ぐのは多少の面倒はあっても乗り降りする人々を観察できると考えたからだ。

両替を終えたロビーの遠くにメトロ乗り場を示す看板が見える。
ぼくは小さなバックパック1個を持って、メトロ乗り場へ向かった。

目指すのは旧市街スルタンアフメット地区だ。
スルタンアフメット地区は、歴代スルタン(王)たちの住居だったトプカピ宮殿やアヤソフィア(有名なモスク)、ブルーモスクなどが立ち並ぶ歴史風致地区。
初めてのイスタンブル。
まずは歴史をこの肌で感じたい、そう思った。

メトロとトラムで旧市街へ向かう

ロビーを横切るように歩き、メトロ乗り場への長い長いエスカレーターを降りる。

エスカレーターを降りると、メトロへの案内看板が出ていた。
それに従って進む。

綴込み地図にはメトロやトラムの乗り方についての記載があった。
イスタンブルではメトロやトラムに共通して使えるイスタンブルカルテと呼ばれるプリペイド式の乗車券がある。
ちょうど日本のSuicaやPasmoのようなものだ。
一度購入して必要額をチャージしておけばその都度チケットを購入する必要はない。
ちなみにイスタンブルの鉄道切符はジェトンと呼ばれるコイン型の切符(と呼ぶのはおかしいかもしれない)。
乗車するときはイスタンブルカルテと同じように改札機にタッチする。
下車して改札外に出るときはスロットに入れて回収される仕組み。

初めての街ではプリペイドカードが役に立つことは台湾で体験済みだった。
台北の街はMRT、バスなどの交通機関が共通で乗車できるイージーカードというものがある。
これはコンビニや書店など多くの商店での支払いに使え、非常に便利だった。

エスカレーターを降りたロビーの正面に、切符の自動販売機と並んでイスタンブルカルテの券売機があった。
ぼくは18リラ分がチャージされた20リラのイスタンブルカルテを購入した。

購入したばかりのイスタンブルカルテを使って自動改札を通り抜け、プラットホームに止まっている車両に乗り込んだ。
6時始発のメトロは15分前だというのにかなりの混み具合だった。
ぼくは車両中央部のポールに寄りかかるように場所を確保した。
冷房が強い。
先ほどのまでいた空港ロビーは汗ばみそうなくらいの温度だったのに、このメトロの中は冷蔵庫の中のようだ。

大柄な男性を乗せた車椅子を押している婦人が、乗車に手間取っていたので手を貸した。
車椅子に乗っているのは彼女の夫であろう男性。
二人はトルコ語で礼を言ってくれていたようだが、残念ながらなんと言っているのかはわからなかった。
ただ、にこやかに挨拶ができたことが嬉しかった。

6時になる頃には8時台の山手線並みの混み具合になった。
空港から街に向かう乗客がこんなに大勢いるのが不思議だったが、今思えば、空港職員が仕事を終えて帰るところだったのかもしれない。
その想像通りなのだろうか、駅ごとに乗客は降りていく。
はじめは地下を走っていたメトロだったが、空港から何駅かすぎたところからは地上に出ることが多くなっていた。
ぼくが乗り換えをするゼティンブルヌに着く頃には、すっかりと車内は空いてしまった。

ゼティンブルヌではメトロからトラムへ乗り換える。
ここからは完全に路面を走っていく。

遠くに郊外の住宅街をみながら進むトラムは、だんだんと繁華街になっていくのがわかった。
街はこれから活動しようとしている、その準備で忙しそうだ。

トラムには人々が頻繁に乗り降りしている。
活気のある街にぼくは少し興奮してきた。

 

エミニョミュでトラムを降りる

やがてトラムは歴史的地区に入ってきたようだ。
左右のモスクや歴史的建造物をキョロキョロと見ていると、突然目の前にガイドブックで見たブルーモスクやアヤソフィアが現れた。
とその途端、トラムは左に大きく曲がり、狭い通りを滑るように降りていく。
こんな狭い通りをトラムは猛スピードで走っていくのか。

クランク状になった路地をまるでローラーコースターのように滑る降りるトラム。
窓からは建物が触れそうなくらい近い。
もっとも窓は開かないのでそれは叶わない希望ではあるのだが。

狭い路地から広場に出た。正面は金角湾のフェリー乗り場だ。右手にはシルケジの駅が見える。オリエント急行の東端の駅として有名だ。

ガラタ橋が見えてきた。
ぼくはトラムを降りることにした。

エミニョミュ駅で、ぼくは下車した。
目の前にはガラタ橋。
ガラタ橋を渡った対岸にはガラタ塔が見える。

そのままトラムに乗ってガラタ橋を渡れば、新市街と呼ばれるダウンタウンに行けることはガイドブックで読んで知っていた。
しかし、今回はなんとなく旧市街を歩きたい気分だった。

今日はここからグランドバザールに隣接するバヤズィット駅までを探索しようと考えた。
特に理由はない。
バヤズィット駅から奥の景色が、歴史的建造物の多さなどもあって、ぼくの中ではそれまで通過して来た地区とは別の感覚だったからだ。

トプカピ宮殿へ向かう

朝日が眩しい。

トラムのエミニョミュ駅はフェリーターミナルに面している。
ぼくは岸壁に沿って歩き出した。

前記したように、今日は半日しか時間がない。
昼には空港へ戻り、再度保安検査を受けなくてはいけない。
そんなわけで、今日はトラムが走ってきた道を戻るように歩いて行こう。

歩き出してすぐに、イスタンブル名物の胡麻パン「シュミット」を販売する小さなスタンドを見つけた。
空港に着いてから何も食べていなかったぼくは、一つ買ってみることにした。

ドーナツ状の硬い胡麻をまぶしたパン。
1個1リラ。

手にとってみると、結構大きい。
フカフカと膨らませたものではないのでずっしりと重い。

シュミットを食べながら、ぶらぶら歩き出した。
左手にシルケジ駅を見ながら数台のタクシーが客待ちをする広場を通り抜ける。
先ほどトラムが狭い街路をローラーコースターのように駆け下りてきたところまできた。

真新しいビルもあるが、多くは年代物の建物。
いったいいつから使われているのだろうか。

洒落た土産物店や洋品店、菓子店などが軒を並べている。
この角を曲がれば、きっと楽しい散歩になるだろうなと想わせるような路地がいくつも交差する。
そんな誘惑を振りほどきながら、ぼくはきた道を戻る。

時折持ってきた折り込み地図を確認する。
この先にトプカピ宮殿があるはずだ。
右手に警察官が立っている。
警察署前のようだ。
警察官なら英語が通じるかと思い、トプカピ宮殿までの道を聞いてみた。
残念ながら、彼は英語では返してくれなかった。
しかしぼくの聞きたかったことはわかったようで、「この先左」のようなゼスチャーをしてくれた。

彼に言われた(と思う)通りに歩く。
途中ふりかえると、彼が「もっとまっすぐ」というようにジェスチャーをしてくれる。
どうやらここが宮殿の入り口と思われる場所で彼をふりかえると、「左に行け」とジェスチャーで教えてくれた。
ぼくは感謝の意を込めて手を振って大きく合図仕返した。

トプカピ宮殿門をくぐり、左手にチケットブースを発見した。
さっそくチケットを購入しようとしたが、顔を振って売ってくれない。
よくよく聞いてみると、入場できるのは9時からだという。
時計を見ると、まだ7時を過ぎたばかりだった。
1時間も待つのはどうかと思い、またトピカプ宮殿全体を見るのはまる1日かかるとの情報もあったので、今回は宮殿見学を諦め、次回のお楽しみとする事にした。

 

旧市街探索

踵を返したぼくは再びメトロが走ってきた道を戻る。
やがてすぐに噴水が美しい広場に出た。
アヤソフィアとブルーモスクの間の広場だ。

そういえば、メトロやトラムの中では立ちっぱなし。
トラムを降りてからもずっと歩いてきたので、ベンチでちょっと休憩する事にした。

噴水の向こうでみやげ物屋が開店の準備をしている。
それを見ながら、そういえば先ほどのシュミットを食べた以外に何も口に入れていない事に気がついた。
そういえば喉が渇いている。

どこか店に入ろう。

とりあえず例のごとく来た方向を戻るように歩き出した。
太陽がだんだんと昇ってきて、それに伴い気温も上がってきた。
東西に伸びる道を日陰が多い方を選んで歩く。
少し歩くととあるホテルの1階レストランが朝食サービスを提供しているのが目に入った。
サラダとフルーツ、チーズ、パンのシンプルな朝食。
機内食でもパスタやオムレツのようなものばかりだったので、なんの変哲も無いこれらが美味しそうに見える。
さっそく入ってみた。

ここでも英語は通じているような通じていないような、微妙な感じだったが、とりあえずテーブルについて食事をはじめた。
喉が渇いていたせいか、フルーツが美味しい。
パンは小さいものをほんの少しだけ頂き、ほとんどフルーツとサラダをいただいた。
この後もイスタンブルらしいものがあったら食べてみなくては、と思っていたのでほどほどで切り上げる事にした。
食べ終わり、トイレを拝借し、会計をして外に出た。

先ほどより随分暑くなっている。
日陰を選びながら歩く。

突然、「おはよう、昨日も居たよねー」とすれ違いざまに声をかけられた。
ぼくはほんの数時間前にここについたんだよ。
昨日はいるわけがないじゃないか。

トルコは親日国のせいか、日本語を勉強している人が多いと聞く。
彼も勉強している日本語を使ってみたかったのだろうか。

途中の小路に入ってみたり、歴史的な建物を見入ったりしながらぶらぶらと歩く。
ずいぶんと寄り道したつもりだったが、程なくバヤズィット駅のところまで来てしまった。

あっけなく今日の目的の場所まで戻ってしまった。
バヤズィット駅周辺とこれより以西は欧米のブランド店やチェーン店なども多数出店する商業地域のようで、日本でも見慣れたブランドの看板がいくつも目に入った。
これまでの歴史を感じさせる建物群から、急に景色が変わった事で、すっかり興ざめしてしまった。

ふと我に返った。
せっかくなのでもう少し何かを食べておこう。
そんな気になった。
そういえばガイドブックに、「トルコの庶民の朝食はズッペ」とあったのを思い出した。
すでに朝からシュミットとフルーツを食べていたので、空腹ではなかったのだが、せっかくここまで来たのだから、とズッペも食べてみる事にした。
バーガーキングの向こうに飲食店らしい看板がいくつも見える小路を見つけた。
その小路を入ってみる。
そのバーガーキングの隣はサブウェイを思わせるサンドイッチの店。
そのさらに隣が、希望するズッペの店だった。

店内に入り椅子に座る。
周りを見渡すと、皆ズッペをすすりながらテーブルの上におかれたパンを食べている。
どうやら、机の上のカゴに入ったパンは食べ放題らしい。
この日のズッペは5種類。
「さて、どれがいいんだろう」と一瞬迷ったが、一番左にあった黄色っぽいズッペを頼んでみた。

ズッペの味はというと、多分牛骨ベースのスープだと思う。
塩味のよく効いた、旨味のあるズッペだった。
不思議だったのは添えられたレモンを絞り入れると辛味が出てくることだった。
周りの人々の真似をして、パンを一切れとりちぎって食べてみたり、ズッペに浸して食べてみたりした。
つまらないことかもしれないが、ほんの少しだでもトルコの人々の生活の一部を垣間見れた気がして嬉しかった。

店の写真を撮りたいと思い、カウンターの中でズッペをよそってくれた男性にお願いしてみた。
彼は首を横に振ったので、断られたのかと思ったが、じっと動かない。
どうやらシャッターを押すのを待っていてくれているらしい。
そういえば、ガイドブックにYes / Noのジェスチャーがあべこべだって書いてあったことを思い出し、一人失笑した。

イスタンブル の暮らしを垣間見る

ズッペを食べ終わったぼくは礼を言って店を出た。
ふと通りの奥を見ると坂を降りた向こうに海が見える。
ふいに海まで行ってみようと思い立った。
見える海はマルマラ海。
いわばエーゲ海と黒海の間にある中海。
エーゲ海とはダーダネルス海峡で、黒海とはボスポラス海峡で、それぞれと繋がっている。

坂を下りながら、両脇の商店やアパートなどを眺める。
先ほどのバヤズィットやスルタンアフメット地区などとは違い、人々の生活臭が漂ってきそうだ。

次回イスタンブルに宿泊するのなら、こんな人々の生活がわかる場所に宿を取りたいと思った。

残念ながら海まで降りる道は途中で道路工事のため通行止だった。
迂回すればさらに下っていけそうなものだったが、なんとなく「くるな」と言われているような気がして、それ以上先へ進むのはやめてしまった。

今降りて来た坂道を登り、先ほどズッペを食べた店の前まで戻って来た。
ほんのわずかな時間しか経っていないのに、先ほどぼくが座っていた時の客は誰一人居ず、また写真に収まってくれたコック氏もカウンターの中にはいなかった。
なぜか長い時間が過ぎてしまったような気がしてしまった。

バヤズィット駅まで戻ってみた。
暑くて喉が渇いたのでペットボトルの水を買ってみた。
まだ少し時間が早いので、グランドバザールへ入ってみた。
ところが時間が早いせいか、入り口付近の多くの店がまだ搬入や開店準備の最中だったのでそれ以上奥へ進むのは遠慮して、空港へ戻る事にした。

空港へ

バヤズィット駅で改札を通ろうとしたところ、ブザーが鳴って入れなかった。
どうやらイスタンブルカルテの残高が不足のようだ。
改札内にいるサングラスにTシャツとショートパンツ姿の日焼けした男が、外にあるトップアップ機を指差した。
彼は職員なんだろうか。
そういえばさっきからずーっと改札の中にいるようだ。
彼の教えてくれたトップアップ機は液晶の色褪せが激しく、読み取るのにひと苦労だった。
また今朝両替したトルコリラの小銭がもう残り少なく、結局紙幣を使ってどうにかこうにかトップアップすることができた。
そのため少々無駄に多く残高を入れてしまう事になった。

あとは朝来たトラムとメトロを乗り継ぐだけ。
トラムの中の冷房が心地よかった。ゼティンブルヌでメトロへ乗り換えた。
この時ちょっとした注意が必要だ。
空港へ向かうホームと街へ向かうホームで、改札が別なのだ。
ぼくはうっかりと間違った方の改札を通ってしまい、残高を無駄にしてしまった。

まあ、こういった失敗も旅の楽しみの一つと思っているので気にはしていない。

ともあれ空港に戻った。
アタテュルク国際空港はセキュリティチェックが厳しい。
空港に入るときに1回、中に入ってからもう一度保安検査と、都合2回のセキュリティチェックを受ける。
混んでいる時間帯だと思いのほか時間を取られてしまうので、注意が必要だ。

今回は搭乗時間の1時間半ほど前にセキュリティチェックを通過できた。
制限区域に入ってしまうと、他にすることがなくて、「もう少し街にいてもよかったかも」とも思ったが、途中の移動に問題があると肝心のフライトに間に合わないことも考えられる。
移動時間は十分余裕を持った行動が必要だ。

その後13時30分定刻のフライトで、ぼくはドイツへ向かった。

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